新車購入読本2023 シニア世代のクルマ選び~予算をどこにかけるか
限られた予算での(ここ、大切です、限られていない方はこの記事をスルーしてください)車選びを考えるとき、多少年式が古くても見栄えや内装が良い中古車か、それより見栄えやサイズは劣るとも、新車のスモールカーか。
人生には選択はつきものですね。
不動産の物件選びとも相通じるところがあります。アクセスの良さ(駅からの距離、時間など)か、築年数か、広さか、周囲の生活環境(学校への近さ、スーパーの近さ、自然環境、治安面など)のどれを優先して物件選びをするか、に似ています。
小さくても新車を
結論を先にいいます。車の大きさや内装の豪華さよりも、シニア世代には悲しい事故をできるだけ起こさないためにも、最近のクルマ、新車を絶対的にお勧めします。
最近のクルマは安全支援システムが充実しています。基本的に急発進抑制や衝突回避装置、踏み間違い防止装置などがついていて、ひとことでいうなら「ぶつからない車」をお求めになることを強く推奨します。
標識認識やオートクルーズコントロールなどはあるに越したことはないですが、まあなくてもなんとかなります。ブラインドスポットモニター(BSM、自車の側方に車両が接近していることをお知らせしてくれるもの)も同様です。ただし、日常的にクルマの真横を見る習慣が乏しい方や、車線変更しようとして後続車からクラクションを鳴らされたご経験がある方には、装着されている車種・グレード、またはオプションで付けることをお勧めします。
さらに最近のクルマであれば、オートライトやデイライトも付いていることが多く、周囲からの視認性も高まります。特に夜間、「どうして気づかないのか」と思いますが、夕暮れどきはともかく、暗闇になっても全くライトを点けずに走行されている人生の先輩たちをお見掛けします。悪いことに、外装色も黒だったり、紺だったり、闇に同化するカラーなもので、完全に保護色になっています。
実際に夜間、こうしたクルマに左からヌッと出られて、慌ててブレーキを踏みました。高齢者は夜間、ほかの車の認識も難しいようで、平気できわどいタイミングで優先道路に飛び出してきます。
オートライトが備わっていると、ライトのことを気にしなくてすみます。さらに最近のクルマであれば、前照灯がLEDになっていて、ハロゲンよりはるかに照度が高く、運転しやすいかと思います(ときに傾斜がついていると対向車がまぶしいという問題はありますが)。
以上が最近、目安としては2020年前後以降にモデルチェンジされたクルマをお勧めする理由です。
高齢者が引き起こす悲惨が事故をまず、防がねばなりません。安全運転支援システムは日進月歩です。パソコン並みとまでいきませんが、時代があとになるほど、高性能なものが過去よりも安価に装備されます。
予算的に限りがあればまず、軽自動車でもよいのでモデルチェンジしたばかりの車種を検討してみましょう。自分の能力が怪しくなってきている分を、こうした先端技術の装置たちが補ってくれ、ご自身も、周囲も守ることになります。
小さいクルマは取り回しの点でもメリットがあります。例えば、左折時に右に頭を振る方もよく見ます。このときドライバーは左折に気をとられ、頭を振ったほうの右サイドは全く見ていません。2車線で並走していると、とても怖い思いをします。こうした点でも全長が短めの小さなクルマなら、いちいちバスみたいに頭を振らなくても曲がれます。もともとそうしないと曲がれないくらいの運転技量の方が、さらに年齢を重ねると危険度が増します。こうした点からもスモールカーをお勧めします。
被害者もイヤですが、まず加害者にならないこと。これがハンドルを握るものの絶対法則です。
小さいクルマは維持しやすい
コスト面でもメリットがあります。1トンを超えるか、以下か、排気量が1000㏄を超えるか、以下かで重量税や自動車税が変わってきます。さらに雪国でタイヤ交換が必要な場合も、大きな径のタイヤよりも(こちらのほうが見栄えはよいですが)、小さなタイヤのほうが圧倒的に安いです。車検費用もまた、しかりです。
厳密にいえば、否、厳密でなくても、走る歓びや所有する満足感という点では、大きな車で走りも余裕、内装もプラスチックでない素材が表面を覆っている、シートやステアリング、シフトノブも本革、などというほうが嬉しいかも知れません。
かくいう私も今のクルマの選択で、5年落ちの程度が極めてよいスバルのセダン、今はなきB4と、新車のフィットで迷いました。予算は乗り出し価格であまり変わらなかったのです。それまで軽自動車でしたので、フィットを見たあとも気持ちはぐっとB4に傾いていました。
数日間、両方を所有したとして、夢想していました。たとえば近隣のイタリアンレストランにいったとき、B4とフィットを店の駐車場の枠内に止めたとき、隣のクルマとの距離や前後スペースの余裕、狭い駐車場スペースでの回頭性など、両車のサイズは頭に入っていましたので、自分の軽自動車を基準に前後左右に拡大してシミュレーションしたのです。
その結果、残念ながら我が家の生活圏で考えると、B4でも運転する自信はあるものの、難しいと判断しました。狭い道でのすれ違いや個人の店の狭い駐車場での駐車、何よりも我が家へのアプローチ道路の狭さなど、実際に巻き尺を手にして計測してイメージしました。その結果の判断です。
また中古車の場合はすでに一定の年数が経過しており、走行距離が少なくても経年劣化によりパーツの交換が必要になります。そして自分も年々、若返っていくことはあり得ず、車と同じように経年劣化して各種機能の衰えが始まることを冷静に、冷静に考えたとき、導いた結論はフィットでした。
そしてこの決断は今でも後悔していません。
シニア向けの記事を書いているのは・・・
ネット上のwebマガジンなどで、シニア向けのクルマ選びのポイントや、お勧めのクルマを掲げている記事は少なくありません。
ただ、こうした記事を書いているのは、少なくても還暦前の、下手をしたら30代、40代の方が執筆しているのではないかと思ってしまいます。というのも、「多分、シニアとはこうだろう・・・」という推測が入っていると思わざるをえない点があるからです。
乗降のしやすさは大切で、私も後席については以前、記事にしました。
着座位置(これは確かに大事)やアシストグリップに注目しているネット上の記事もありました。しかし、シニア世代予備軍?(もう突入?)の私から言わせれば、運転席ドアにしても、ガバッと90度くらい開くか、ということのほうが、さらに大切に感じます。
狭い駐車場でお隣がいたら、叶わぬことですが、自分の駐車場や、広いところでもドアの開く角度が限られていると、身をよじって左足を運転席に差し込み、頭をかがめて、「いててて・・・」などとうなりながら、体を滑り込ませるわけです。開口角度が狭いと、ドアが邪魔になってしまうのですね。
これは一例ですが、ほかにも自分がその年代になっていないとわからないことはあるものです。
最後に話が脱線気味になりました。体操でいえば「着地が乱れた」感じでしょうか。これもご愛敬ということでご容赦くださいませ。
地方都市ではおいそれと高齢になったからといって免許返上とはいかない事情があります。そのときに絶対的に考えていただきたいことは、繰り返しになりますが、決して「加害者」にはならないことです。自身の感覚、判断力、反射神経、視力は落ちてくるのですが、現代の最新鋭の車種はそれを補う装置を備えています。頼るべきところはこうしたシステムに頼り、安全にドライブを楽しもうではありませんか。