車選び:メーカーのこだわり~スバル④「理念と”死亡事故ゼロ”」
スバルの目指す企業像とはどんなものでしょうか。
スバルがこだわる「スバルらしさ」とは、どのようなものでしょうか。
今回は、これらについて解き明かすことで、車メーカーとしての魅力を探りたいと思います。
「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」
これは2018年7月に発表されたスバルの中期経営ビジョンにおいて、2025年に「ありたい姿」として語られているメッセージです。そして、そのために「どうするか」について、以下のように語られています。
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自動車メーカーとしては決して規模の大きくない当社は、限られた経営資源を「選択と集中」し、「付加価値」をつけ、徹底した「差別化」を図るビジネスモデルを展開しています。
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ここでいう「選択と集中」とは、全方位的にビジネス展開するのではなく、「商品はSUV・スポーツモデル、市場は米国をはじめとするモータリゼーションの成熟した先
進国を中心に」ビジネスを展開するという、潔い割り切りです。
ですから、台数や売り上げをいたずらに追求するのではなく、「差別化・付加価値戦略を軸に、営業利益率を意識した経営」を目指すわけです。
こうした姿勢をみていくと、頷けます。
スバルはOEM車をのぞいて、コンパクトカーはありません。一番安くても、インプレッサやG4からです。車種はほかにXV、レヴォーグ、フォレスター、BRZ。以上、という車種構成です。
「スバルらしさ」とは何か?
マツダもイメージが湧きやすいメーカーですが、スバルのほうが車種構成が限られているだけに、なおさらメーカーイメージが湧きやすいかと思います。
まずAWD、アイサイト、私の世代ですとレガシィツーリングワゴンやアウトバック、そして今のレヴォーグにつながるワゴンの系譜を大切にしている会社、一方でフォレスター、XVのように雪道、オフロードもこなす車づくり、そして今は影が薄くなりましたが、B4のようにセダンでもAWDで走行性重視のクルマづくりのイメージです。
スバル社内でも「『SUBARUらしさ』という暗黙知があり、新しいことに取り
組む際、社内で『それは SUBARUらしくないね』などの意見が出ることがありました」といいます。「SUBARUらしいとは何か」という議論を突き詰めた結果、それはを「安心と愉しさ」という表現に集約されたのです。今、いろいろなところで、この表現を目にしますよね。「安心」は運転していての「安全・安心」なのですが、「愉しさ」は、単に「運転の楽しさ」を言っているのではなく、「スバル車がある生活の愉しさ」を指している、と解釈しています。前述のように「笑顔をつくる会社」を目指しているわけですから。
実際に中村社長兼CEOの言葉にも「このようにSUBARUは単にクルマとしての機能ではなく、豊かな生活を提供してくれるブランドとしてお客様に共感していただけるようになりました」とおっしゃっています。ここで「このように」が指しているのは、「お客様(スバル車ユーザー)のSNSへの投稿を見てもクルマとご家族やペットが一緒に写っている写真が多いこと」(中村社長)なのです。
マツダは「人馬一体」で運転の楽しさが前面に出ていましたが、スバルはドライバーだけでなく、一緒に乘る家族や、その生活までの広がりを含めた「愉しさ」なのだと思います。
2030年に死亡事故ゼロ
2030年にSUBARU乗車中の死亡事故およびSUBARUとの衝突による歩行者・自動車などの死亡事故をゼロにすることを目標に掲げています。
スバルの調査によると、死亡交通事故のうち、自車起因が約2/3、残りが他社起因だといいます。先進運転支援システムにより事故を防いだり、ドライバーが眠気を感じれば警告したり、意識を失ったりすれば周囲に警告しながら停車したり、万一、事故にあってもコネクティッドサービスによる事故自動通報システムによって救命率を高めたり、ステアリングシステムの摩擦適正化を図ることで車両反応の遅れを回避したり、そもそもスバルグローバルプラットフォーム×フルインナーフレーム構造で衝突安全性能を高めたり・・・といろいろな手段を講じて「本気で」ゼロを目指しています。
上記をスバルの言葉で置き換えると①「ADAS(Advanced Driver-Assistance Notification)の高度化」②「AACN(Advanced Automatic Collision Notifeication)
先進事故自動通報の採用」③「衝突安全の継続的な強化」を図ることで2030年にはスバル車が絡む死亡交通事故をゼロにする、ということです。
※①はアイサイトの高度化=2020年代後半にはステレオカメラとAIの融合、アイサイトとDMS(ドライバーモニタリングシステム)の連動などを図るとしています。③は歩行者に加えて自転車に乘った人(サイクリスト)を保護するエアバッグを同じく2020年代後半に導入するとしています。
他社に比べて、販売台数がそれほど多くないから言えることなのかも知れませんが、言葉にして宣言する、その心意気は評価したいものです。
レヴォーグ、2020年度ファイブスター大賞を受賞
国土交通省と(独)自動車事故対策機構(NASVA)が、自動車の安全性能を評価・公表する「自動車アセスメント」において、最高評価にあたる「ファイブスター賞」を6車種が獲得、その中で最高得点だったレヴォーグが大賞を受賞しました。
細かくみていくと、レヴォーグは衝突安全性能評価で96%の到達度となり、2位以下を8ポイント以上、引き離しました。予防安全性能ではハリアーもレヴォーグ同様に100%でしたから、衝突安全性能の差で、大賞に輝いた、といえます。
いわば国から衝突安全性能についてはお墨付きをもらったようなものです。
また2021年5月に開催された「SUBARUテックツアー レヴォーグ総合安全性能説明会」(プレス向けのオンライン説明会)では「「アイサイトVer.2」搭載車の追突事故発生率は、非搭載車から84%減少し、歩行者事故発生率は49%減少。さらに、「アイサイトVer.3」になると、搭載車の追突事故発生率は、0.06%」ということが語られたといいます(出所:クリッカー https://clicccar.com/2021/05/25/1085803/)。
歩行者保護のエアバッグを備え、乗員は無事でも歩行者が犠牲になるような事故も減らす取り組みを行っており、自車が絡む死亡事故を2030年という時期を区切ってゼロにするという姿勢は、高く評価したいものです。
日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞
すでに旧聞に属しますが、レヴォーグは2020 – 2021 日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
受賞理由は以下のとおりです。
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「スバルグローバルプラットフォーム」とフルインナーフレーム構造の組み合わせで類い希な操縦性と快適性を高次元で両立。日常域での扱いやすさを重視した新開発1.8L直噴ターボエンジンはリーン燃焼という新しい技術トライとユーザー目線の開発姿勢で支持を集めた。インテリアも大型センターインフォメーションディスプレイや、フル液晶メーターで構成された先進的なデジタルコクピットを採用するなど大きく進化し、2020年代のベンチマークにふさわしい仕上がり。3D高精度地図データと、GPSや準天頂衛星「みちびき」などの情報を活用した高度運転支援システム「アイサイトX(エックス)」を設定しながら、装着車で317万円(税抜)スタートというコストパフォーマンスの高さも評価した。
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60人中25人が10点をいれており、2位のフィットに大きく差をつけた得票となりました。私は10点を入れた方のコメントをすべて読んだのですが、ほぼ全員がアイサイトXをポイントにしており、その技術とコスパが評価されたと感じました。
次回はEV化やこれまで触れてこなかったスバルの技術などについてまとめていきます。そして次々回はスバルのサイトのつくりや使い勝手、消費者としてメーカーに望みたいことなどをまとめる予定です。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。