車選び:メーカーのこだわり~マツダ④「その他の特徴と総括」
マツダの特徴を2回にわたってみてきました。
このほかにも、触れておきたい特徴があります。
その一つは、マツダはマイナーチェンジと言わない、といいますか、マイチェンがないのです。その代わり、IPMと言われる、独自の毎年の改良を加えその車種を進化させていくのです。
インテリム・プロダクト・メジャー(IPM)
マツダは「開発、生産、購買、そしてサプライヤーまでが一体となって、将来を見通した商品、技術の活動プランを立案する「一括企画」を行って」いるために、マイチェンという言葉はすべての車種で使わずに、IPMという年次改良を行っているのだといいます。
中にはCX- 3のように、年次改良で電動パーキングブレーキを採用したというケースもあります。最近では、車種別サイトの方でCX- 5を見ていただくと、年次改良でどの部分を進化させたかということの説明が掲載されています。
既存のユーザとしては、年次改良によって、年々置き去りにされていくような感触を受けるかもしれませんが、マツダは、それよりも車を進化させるという姿勢を示すことで、既存ユーザにも評価してもらい、次もまた同社の車を選んでもらおうという戦略です。
こうなってきますと車種そのものと言うよりも、マツダというメーカーの姿勢に共感できるかどうかということが、マツダユーザーになるかどうかということを決めていくといっても過言ではありません。
他のメーカーではこうした改良を毎年行うということはほぼ、ありませんので、ユーザーの声を丁寧に聞きながら、改良を加えていくという姿勢は評価されても良いのかもしれません。自分がマツダユーザだったらどうかと思うと、多少微妙な気持ちにはなりますが、それだけ毎年、改良が加えられているのであれば、次に自分が買い換えるときには、熟成された形で、かなり進んだ技術が盛り込まれている形になっているだろう、ということで自分を納得させるのだと思います。
車名は数字
他にもマツダで特徴的なのは、車名の付け方です。
ご存知のようにマツダは、愛称ではなく、最初のアルファベット2文字で車のカテゴリーを示し、その後の数字で車の大きさを示していきます。MAZDA+数字の車名もあります。
車の大きさ的には3よりも5の方が大きく、5よりも8の方が大きいという、とてもわかりやすい構成になっています。
車両価格も、ほぼこの順番に安い方から高い方へと設定されています。もちろんある車種の最上級グレードと、次の数字がついた車種の最廉価グレードでは、価格の逆転現象は起こります。
どうしても装備が充実した車を選ぼうと思うと、マツダの場合、このある意味、車格を表すような数字が、大きい車種を選択していかざるを得ません。日本の道路事情を考えると、1750ミリ位の車幅であっても、装備が充実した車種があっても良いのではないかと思います。
CX-3の1.5L特別仕様車等では、価格の割にかなり安全支援システム等が充実しており、CX 5と比べても遜色がない装備内容となっています。
しかし内装全体を見ると、やはりCX- 5の方が見栄えが良いですし、CX-3の特別仕様車では、タイヤサイズが16インチのものしか選べません。サイズが小さくても内装や装備が充実している車種展開をこれから計画してくれればいいなと思います。
そういう意味ではドアの開放の仕方が独特ではありますが、MX-30や、CX-3の上級バージョン的なCX- 30は、今申し上げた条件に近い車種なのかもしれません。
どうしても数字は序列を表し、数字が大きくなるほど良いようなイメージがあります。単に日本ではこうした車名の付け方に慣れていないだけなのかも知れませんが、私は愛称のほうが、それぞれの車の個性が出せるような感じがします。
ブラインドスポットモニターが充実
マツダの安全運転システムの設定の仕方もやや特徴的です。
特徴的なのは、ブラインドスポットモニターが他のメーカーよりも充実しているという点です。全車速追従型のレーダークルーズコントロールも標準で設定されていたりします。
一方でメーカーによっては標準装備が進んでいる標識認識装置は、下位グレードではオプション設定がなかったりするなど、こちらは他のメーカに比べると設定が少ないように感じました。
マツダが目指す方向
2018年に就任した丸本社長兼CEOは「究極的には「お客様にとって一番近いブランド」と言われるようになりたい」と言っています(レスポンス トップインタビューより2019.1.7 https://response.jp/article/2019/01/07/317700.html)。
丸本CEOは、かつてのミニバンMPVの主査を務めた方です。
「正価販売や顧客体験などへの取り組みを強化しながら、結果として200万台を売る力をつけることが大切であって、200万台を売ることが大切なのではありません」(同サイトより)と言っています。ブランド価値を落とさない、というのは過去の苦い体験からきているのでしょう。
特別仕様車はお買い得
正価販売ということは、値引きは期待できないということになります。その分、下取りに出すときに高く売れれば、初期投資はかさんだとしても、使用期間において金額的償却は抑えられるのではないか、という期待も一方であります。マツダ以外のメーカーに乗り換えようと思ったときに、他メーカーのディーラーや、独立系の買い取り店での査定が気になるところです。
マツダ車は後輪にもディスクブレーキが採用されていたり、小さくても4気筒エンジンだったり、標識認識システムをのぞいてはブラインドスポットモニターの採用率が高いなど、安全運転支援システムの充実ぶりがうかがえます。
また内装も同車格の車では、他メーカーに比べて見栄えはよいかと思います。一方で価格だけを比較すると、やや高めの設定となりますが、これは中身とのバランスですから、絶対的金額をもって「高い、安い」は論じられません。
とはいえ、中には明らかに「お得」な設定もあります。
■CX-3 15S Urban Dresser 2WD(6EC-AT) ¥2,271,500 (消費税込)
※4WD(6EC-AT)¥2,501,700 (消費税込)
サイズは4275・1765・1550
・1.5Lの4気筒エンジン
・前方両脇左右25mをとらえる360度ビューモニター付き
・16インチタイヤ、アルミホイール
※タイヤハウスとの空間が気になる方は2Lモデルことになりますが・・・
■ヤリスクロスZ(最上位グレード)2,210,000円 ガソリン2WD
サイズは4180・1765・1590
・運転席パワーシート付
これに上記の特別仕様車と同じとなるようにオプションを追加すると、
ブラインドスポット49500円、パノラミックビュー33000円、ステアリングヒーター11000円となり、93500円の追加となります。
これをそのまま上乗せすると、CX=3の特別仕様車より4万円弱、高くなります。
実際はオプションをこれだけの金額分をつけると当然、値引きがありますから、このままとはいきませんが、こうした比較をしてみると、マツダの中でも、特に特別仕様車については買い得感が高いということになります。
マツダへの期待
狭い道ユーザーとしては、全幅1765でもかなり神経を使います。
MAZDA2は5ナンバーですが、願わくば5ナンバー枠の車をもっと開発いただきたいものです。かつてトヨタは5ナンバーでも充実した内装や高級感を求めるダウンサイザー向けに「プログレ」という車種を発売しました。内装にウォールナットなども用いて、サイズが小さくても、内装や装備的には3ナンバーセダンを凌駕していました。
しかし消滅してしまったところをみると、マーケット的には難しいのでしょうね。
全幅が大きい車を開発されるときには、前方左右の見切りがよいように設計いただきたいものです。
マツダの車というわけではありませんが、私の地方のセンターラインがないような道では、全幅1800超のSUVに乘られている方は、概してすれ違いのときに、まだ左側方に余裕があるのに、寄ってくれなかったりします。結果として軽自動車やコンパクトカーのほうが、側溝ぎりぎりまで寄って、相手を通さなければならない場面がよくあります。
狭い道をこうしたサイズの車で通るときには、「いざとなれば左側方に寄れる」という自信がある方にハンドルを握ってほしいと願います。
サイトのつくりにひとこと
マツダの車種別サイト、コーポレートサイトのデザインは、車に魂動デザインを取り入れている企業だけあって、統一感があり、デザイン的に洗練されていると思います。
また主要装備表までいかなくても、ある程度のところは車種別サイトで把握でき、グレード感比較ができるところも優れているかと思います。
注文をつけるとすると、その主要諸元表、主要装備表のありかがわかりづらいという点です。
他メーカーでは、その車種のサイトの最下段にこれらの表がPDFで貼り付けられていることが多いのですが、マツダは、右端に折りたたまれているメニューの中の、
カタログ請求という部分をクリックし、全車種のページに飛んでから、見たい車種をクリック、そこから主要装備表をクリックしてPDFが開くという仕組みです。
車種ごとのサイトの最下欄でよいので、リンクボタンだけでもつけると見やすくなるのかなと思います(主要諸元表、主要装備表までみる人は減ってきているのかな…)。
いかがでしたでしょうか。
車選びのときに、少しでもメーカーの姿勢や思想を知ることが、お役に立てばという願いで書いてきました。
やがてほかのメーカーも取り上げていきたいと思います。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。